在りし日の光景 - 幸村編 |
望まれるまま再建に勤しむ城下町を散策した。 「Give me Love and moneyトハ、愛トオ金ヲ私ニ下サイトイウ意味ニナリマス」 時期が、悪かったとしか言いようがなかった。 「えーと…? これは…一体どういう事なんですかね??」 確かに災害と千日戦争とトドメの斎藤龍興の豪遊のせいで家の財政はガッタガタだ。 「姫様がお可哀相だ! そんなにおら達の国は貧乏だか!?」 「本国カラ、長期ノ無担保融資ヲ取リ付ケマシタ!!」 「いや…え? なんて?」 「いや、みなまで言わなくてええんじゃ、黙って俺らの貯めた金子、受け取ってくんろ」 「もう隠さないでええんじゃって!! 分かっとるんじゃよ」 「はぁ…?」 「姫様は国を興された時も、左近様が着物を用意していたんだ。 「Oh!! My god!!!」 それはがこの世界とは別の場所から降臨したから。あの時、持っている物が何一つなかったから。 「そうじゃのう…偶に慶次様と芋掘り来たかと思えば、沢庵茶請けにしてたりするしのぅ…」 「え、姫様って貝合わせとか香遊びする生き物じゃないのか…」 「茶請けに沢庵って…マジか…京の菓子じゃないのか…」 「いんや、おらが村の大根だなぁ」 「芋掘りの時も、顔に土付けて掘り出した後で慶次さんと歓声上げとったぞ」 「それが姫様の遊びって悲しすぎやしないか」 「…香遊びしたくとも、香を買う金がないんじゃろう…」 「う、うーーーーん??」 次から次へと飛び出す奔放すぎるの素行が呼ぶ風評被害に頭が痛い。 「左近殿…家はそこまで貧困だと思われているのでしょうか??」 「どうなんだろうな…でも否定できない事、色々してるからなぁ…」 流石に今回ばかりはフォローのしようがないと左近は言葉を濁し続ける。
「いくらなんでも姫様がお可哀相だよ、こんな悲しい歌を、気丈にも朗らかに歌ってたそうじゃないか! 何時までも差し出された寄付金を受け取らないから、同情の極地にいた民の思いはおかしな方向へと傾いて、重臣らへのクレームになってしまった。 「あんたら本当に姫様のお気持ち分かっとるんか?」 「分かってたら姫様がお金を下さいなんて神頼みしてるはずがないじゃろ!!」 「そうだ、そうだ!!」 「見栄は捨てて、どうか受け取ってもらえんかね」 「えーーーーー? いや、えーーーーーーーーーーー? そうなっちゃいますか…」 「幸村さん!!!」 「え? は、はい!」 「あんたも執務後に暢気に焼酎飲んでる場合じゃないじゃろ!! 「え、いや…そ、そんな…私の立場で櫛などと…恐れ多い…」
口にした者は知り得ぬのだろうが、櫛を贈るという行動には求婚を示す意図がある。 「相変わらず大事になって来たねぇ」 懐かしい光景だと声色に滲ませたのは、階上から降りてきた慶次の弁だ。 「え、あれ!? 慶次殿!? どうしてこちらに??」 「いやー、さんが三成と取っ組み合ってな〜」 何時もの展開だ。それは想像に易い。 「それでどうしてあんたがここにいるんです?」 「今回は三成が珍しく押し負けたんだよ」 「おお!! ついに姫様一矢報いたのか〜!」 一連の展開に慣れ切った民の間で歓声が漏れた。 「で、悶絶する三成を捕縛から放置して逃げたわけだ」 「ああ、なるほどね」 納得する左近。 「え? …え? 慶次殿? 今、なんと??」 「だからな。俺に「慶次さん、後よろしく!」とか颯爽と片手を掲げて、一人で裏口から城下街に逃げ」 言い終わる前に幸村は顔を上げた。 「様―!!!!! 何をしていらっしゃるんですかぁぁぁぁ!!!!!!」 「てったぜ」 慶次の語尾と被るようなタイミングで幸村は絶叫。 「これまた懐かしい光景だな」 左近が羽織の中で組んだ掌を顎に当てて漏らせば、慶次も豪快に笑った。 「今頃孫市の所にでも逃げてる頃かねぇ」 「巻き込みに行ったって所ですか」 「だねぇ。さてと、俺も行くとするかね。そろそろ三成が縛を解いて降りてくる頃だろうしね」 慶次がちらりと左近を見下ろせば、左近は軽く肩をすくめて見せた。 「分かりましたよ、ここはこの左近が引き受けましょう? 「だな」 数多の戦を経て成長した若武者は戦場にあっては凛とした武士へと成長した。 「ん? んんん?? え、あれ? 幸村さん、なんで? え、なんで? 今日は三成の味方なの?」 「そうなります」 「そっか…じゃ、そーゆーことで、御機嫌よう〜!」 幸村と出くわしたは確認すると、片手を振り上げた直後に颯爽そ身を翻した。 「御機嫌ようではございません!! お待ちください!!!」 「なんでよう!! この間は偶にならいいって言ってくれたじゃん!!!」 「それはそれ、これはこれです!!!」 「ってゆーか、それ可笑しくない!? 今回は共犯のはずなのに!!! 裏切者ー!!!」 の悲鳴が街の端から端へと移動して行く。 「幸村!! 貴様も一枚噛んでいたか、そこに二人とも直れ!!!!」 家が誇る教育の鬼、石田三成。城下街に般若顔で降臨の瞬間であった。 「お叱りは後程受けますので、今はまず様を!!」 やんわり自分に向かう矛先をずらした幸村が三成と共に挟み撃ちの要領でに迫る。 「孫市さん、助けてー!!! 教育の鬼と元共犯者が追いかけてくるー!!!」 「おっ。ご指名かよ? 嬉しいねぇ」 「邪魔だ、色情狂!! 普通に死ね!!!」 「退いてください、孫市殿!!!」 「私情出過ぎだぜ? 三成」 「やかましい!! どけ!!! デカブツ!!」 「いやー、どくわけないだろ。何度も言うが俺はさんの護り人だぜ? 「では遠慮なく」 逡巡することなく、幸村は槍を構えた。 「ちょ! 止めてよー!! 復興中の街の景観壊さないでー!!!」 「だったら潔く城に戻れ、屑がァ!!!」 「ハァ?! あんた今、上司である私に屑って言った!? ねぇ? 皆、今の聞いた!?」 逃げていたが三成の暴言にブチ切れて三成に掴みかかって行く。 「あ」 「あーあ」 最初からそれが狙いだったようで、三成はあっさりの両手を塞いで足払いをかけた。 「ふんっ! 相変わらず単純だな、さぁ、城に戻るぞ」 「くーーーーーー!!!! 挑発するなんて卑怯者ー!!!」 三成の腕の中でもがくの足を幸村の掌が上から抑えた。 「様!!! 着物が乱れます!!!」 足が見えてしまうと釘をさしてくる幸村の目が怖い。 「そうだな。今回の件はよく分からないが、お前が俺の女神を姫抱きしてるってのは普通に無しだろ?」 「そう言うこったな」 柔軟な護り人と仕事人の手によっては再び奪還、解放された。 「邪魔をするな!! 有象無象共!!!」 「様、お待ちください!!! 何度も申し上げているように、単独行動はなりません!!!」 「いや〜、本当に毎日が賑々しいよネ、って」 君主自らが引き起こす騒動を遠目に見守りながら、城を預かる竹中半兵衛の声は軽い。 「まぁ、姫ですしねぇ。あんな感じで幸村さんと追っかけっこしてるくらいが健全でいいでしょ」
理解ある同僚に面倒事の処理を押し付けて、この日の幸村との追いかけっこは日が傾くまで続いた。
"遠い未来との約束---第七部" 了
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大変長らくお待たせ致しました。幸村編、やっぱり二人はこの関係がしっくりくるみたい。 尚、姫が風呂場で歌っていたのは「Love&Money」と言いましてZA-ZAさんの曲です。 歌詞はアレだけど楽曲はとても可愛いんですよ。おススメです! 是非聞いてみてね。(19.06.21.) |