服部のレッツゴー・ブートキャンプ |
「私……この運動の最中に過労死しそうな気がする…」 大の字で大地に寝転んで、は訴える。 「最近はね、筆とか箸すら持ち上げるのが辛いのよ…」 「まぁ、様……御労しい…」 「ありがとう、ちゃん……せめてね、せめて、この着物がね、脱げたなら…」 鼻をすすりながら泣くの額と肩を、左近と孫市の腕が労うように撫でた。 「ですから、姫…それだけはどうかご勘弁を」 「そうだぜ、女神。いくらなんでも、貴方の美しさは男には目の毒だ」 「うん、分かってる……でも……でもね、袴であってもね、その下の帯紐が苦しいの…!!」 おいおいと泣き続けるの顔が突然陰った。 「?」 疲れからくる意識の混濁と、逆光の為に自然と目が細くなる。 「貴様、女だろう。こんな所で何という格好をしているのだ。慎みを持て、慎みを」 鋭敏な声の響きから、相手が誰なのかを悟ったが疲れ切った面持ちで笑い、答えた。 「あー、三成〜。久し振り、元気してた?」 近隣諸国への挨拶回りに出されていた彼は、つい今し方帰国したらしく、城に入った途端聞こえて来た重低音バリバリのユーロビートにご機嫌斜めのようだ。 「…それと、さっきのアレはなんだ? 何故あのような奇怪な音曲を垂れ流している? 不快だ」 「……ああ…それはね…」 もう説明する気力もないと、口をパクパクさせるに代わって、が説明する。 「…アホだな」 「…ほっといてよ!!」
自分の不注意だけにその通りなのだが、過酷なカリキュラムをこなした直後にとやかく言われたくはない。 「まぁ、いい機会なのではないか。死ぬ気で頑張れ」 「あんたね…人事だと思って…」 「ああ、人事だ」 「助けようとか思わないのッ?!」 「何故俺が? そんなくだらん遊びに付き合う暇など俺にはない」 淡々と紡がれる言葉に苛立ち、悔しさが込み上げて来たのか、が身を起して吼えた。
「アンタね!! 他に言いようはないわけ!? こっちとら、毎日毎日一時間、突忍背負って拷問みたいな 「そうか」 「そうよ」 「」 「何よ?」 起き上がったの事を見降ろしたまま、三成は淡々と問う。 「自業自得という言葉を知っているか?」 「うん、知ってるけど…?」 「何よりだ。では、因果応報はどうだ?」 「知ってるわよ。あんた、さっきから何が言いたいのよ?」 「いや、知ってるならばいい」 「それだけ? それだけなの? この状況を見て?!」 「先も言っただろう。自業自得、因果応報だ。まぁ、死ぬ気で頑張れ。さすれば何事も叶えられよう」 冷淡に鼻で笑われて、はキレた。 「まぁ、殿…そう言わずに」 「そうだぜ、お前もこの際、自分の事もっと売り込めよ」 据わった眼差しで立ち上がった左近と孫市が、三成の左右の腕を掴む。 「な、何をするッ?!」 動揺する三成の足にが齧りつけば、手伝うとばかりに政宗と幸村が腰に噛り付いた。 「離れろ、クズどもがっ!!」 身の危険を察知した三成が暴れ出す前に、慶次がとどめとばかりに三成の事をその場へと組み伏せた。 「さん、やっちまいな」 「はい」 清々しいくらいに迷いをかなぐり捨てて、は小十郎の腕から外れた腕輪を持つ。 「寄るな」 凄まじい覇気で睨めば、は身動ぎする。 「…! な……ま、まさか…兼続…? 一体、何を…?!」 「三成、たまには運動もした方がいい」 哀れ三成、最後の被害者となる。
気温、湿度ともに良好。天気は晴天。
"おめでとう。今日、この日、この時を持って、君のトレーニングは終了する。 「タイガー。あんた、結構いい人だったのね」 "さぁ、両手を掲げて…自分と、同じようにこのトランス・ブート・キャンプで努力している全ての仲間を称えよう" 「ビィクトリー!!!!!!!!」 腕輪の外れたを筆頭に、解放を満喫して参加者が叫ぶ。 「お前達……どっかおかしいんじゃないのか…」 すっかり筋肉痛になって身動きが取れなくなっている三成が毒を吐くが、誰一人として気にしていなかった。 「いやー、解放されてみると驚くほど体が軽いねぇ」 「確かに…」
かなりの負荷を抱えて生活と共にエクササイズしていた面々に至っては、飛躍的に身体能力が向上していたようだ。 「なぁ、姫様」 「はい?」 「これ、本当に壊しちまうのか??」 「うーん、どうしよう?」
やり続けている間は散々文句を言っていたものの、改めて聞かれると、躊躇ってしまう。 「もし良かったら…この箱…」 「儂らで管理させてもらえんか」 「頼むよ!!」 拝み倒されるまでもなく、もほんの少し壊すには惜しいかな? と思っていたところだ。 「そうですね、皆さんに管理任せようかな。いい鍛錬になるんでしょう?」 「おおっ!!」 「有り難い!!」 「すまねぇな、姫様!!」 「うんん、いいの。たまにでいいから、私の事も混ぜてね」 「勿論だ!!」 和気藹々と談笑するに対し、幸村、孫市、左近、三成が思わず叫んだ。 「様!!」 「おいおい、今度は腕輪はなしにしてくれよ?!」 「ちょ、姫…本気ですか?!」 「少しは懲りろ!!」 言われたは、腹を抱えて笑いながら答えた。 「はーい、ちゃんと気をつけます!! 改めてお礼を言われて、慌てていた面々はこそばゆいとばかりに微笑む。 「ま、さんがやるなら、俺はどっちでも付き合うがね」 「ふざけるなっ!!!」 「一体、何人倒れさせるつもりじゃ!!」
お気楽極楽な慶次に対して兼続、政宗が叫び、渾身の力を込めて彼の肩を叩く。 「あ」 「え?」 跳ね上がった腕輪は宙で緩やかな回転を見せながら、と談笑するの手首の上へとゆっくりと落ちて行く。
…カシャン…
「……………エ?」 まさかと思うが、そのまさかが起きた。 「ヒッ!! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」 勿論、絶叫。 "ようこそ!! スーパー・トランス・ブート・キャンプへ!!!" 忘れたい、逃れたいと思い続けた音曲があの箱の中から流れ出す。
"このキャンプは、トランス・ブート・キャンプをクリアした君の為に用意された特別メニューだ!! 居合わせた面々の悲壮感漂う視線が箱へと向けば、そこには先程消えた筈のタイガーの姿があった。 「…………」 硬直するが、慶次、兼続、政宗を見た。 「…す、すまぬ…」 「責任は取ろう」
兼続、政宗は、青褪めながら、己の手から離れたばかりの腕輪を改めて嵌めた。 「………う、ぅぅ……」 「うっ?!」 「そ、そんな目で見ないで下さいよ…姫…」 「…お、お供致します、どこまでも…」 半泣き状態の眼差しで、が孫市、左近、幸村を見やれば、彼らも諦めたように再び腕輪を腕に嵌めた。 「まぁ、一蓮托生じゃな」 「そんな、秀吉様ッ!!」 無言のまま家康が嵌めて、秀吉がくたばったままの三成の腕と、自分の腕に腕輪を嵌める。 「「「付き合うぜ!!」」」 意気揚揚と参戦して来るのは、例の、トレーニングマニア三人だ。
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BGMイメージは「LOOKA
BOMBA」とか「ナイト・オブ・ファイヤー」とか、躍動感溢れる物。 で、エクササイズの内容はビリーズ・ブート・キャンプをイメージして頂けると、宜しいかと。 これで貴方も慶次のようなムキムキ体型に!! 「トランス・ブート・キャンプ」、税込9800万石。 (分割・返品は不義なので不可) 大好評発売中!! 御用命は、0120-1059-6408マデ。"戦国、ムシルヨ"で覚えてねvv ※マジで電話しないように。 (10.01.17.) |