景品はあなた |
「遊びだと言うが、大谷、卿の副官はなかなかの策士よな?」 「お褒めに預かり光栄です」 官兵衛と吉継の他愛無い会話を他所にゲームは進んだ。 「正兄、清正公さんを潰すわよ!」 「よっしゃ! 来い!!」 何が始まるのかと目を見張る諸将の前で、は「どっせーい」と声を上げると、ブリッジ状態の幸村の腹の上に覆いかぶさるように倒れ込んだ。二人の体が十字に交差する形だ。 「うわぁあああ!!!」 己の腹筋の上にの胸の柔らかさを感じた幸村が赤面した。 「ぐわっ!! 卑怯だぞ!!」 「えー、なんのことか分からなーい」 「分かんねーなー」 きちんと指定された場所に指定された手足を乗せていると笑うも力を抜いていて、幸村に全体重を預けていた。 「殿!! いけません!! そのようなことをしては!!!」 「え〜、何が〜? それとも降参する〜〜〜?」 「いや、それは…その…いや、でも…ですね!!」 言い淀む幸村に上半身を預けっぱなしのは言う。 「ほら、私、皆に比べて体小さいからさ〜〜。こうでもしないと、届かないよね!」 「悪魔だ!! 悪魔がいる!!!」 賽を振りながら囃し立てるのは秀吉だ。 「勝負の世界は非常なのです。さぁ、幸村さん! 気にすることはありません、投降するか潰れなさい」 「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 幸村の顔面が今にも爆発しそうだが、無理もない。 「殿、冷静に。遊びですから、一応、遊びです」 羨望なのかなんなのか、鬼のような眼差しで幸村をガン見している三成を左近が宥める。 「おい、止めろ!! 揺らすな!! 正則!! 少しは耐えろよ!!!」 「え〜、俺、今と同じ組だしぃ〜? 俺も楽したい的な〜??」 の振動を堪えきれずにバランスを崩しまくる幸村。 「さぁさぁさぁ、音を上げてしまっていいんですよ! 楽になりましょう?」 「いや…しかし…でも…その…って、三成殿! そんなに睨まないで下さい!!」 外野からの殺気を感じ取った幸村が悲鳴を上げる。 「俺の事は気にせず、耐えられるだけ耐えればよいのではないか」 言葉と裏腹に、三成の背後に般若が見えた。 「三成、お前も混ぜて貰ったらどうだ? 恩恵を得られるやもしれぬぞ?」 「冗談じゃない!」 「ですよねぇ」 子供の遊びなど、三成は興味ないだろうと思っているのが。 「さぁさぁさぁ、降参するなら何時でも受け入れますよ!」 追撃してくるに耐え兼ねて幸村は叫ぶ。 「ひ、秀吉殿!! 次の!! 次の色の指定を!!」 「ほいさ!」 秀吉が賽を振った。 「続いていくぞ〜」 狙ってやってるんじゃないだろうな? と言いたくなるくらい、幸村・清正組の賽の出目は悪かった。 「次の色はな〜」 正則の足が動いて、幸村の逃げ道が出来た。 「ほいじゃ、の番じゃな」 「はいはーい」 幸村の希望を潰す位置に、の足が置かれた。 「ぐぅ!」 幸村が唸り、清正が最下層で叫ぶ。 「、汚いぞ!!」 「なんのこと〜?」 「勝負の世界は非情だぜ〜?」 わいわい言い合う四人を眺めながら、吉継はしみじみ思った。 「…仲がいいのだな…」 ぼそりと三成が呟いた。 「殿、案ずるより産むがやすしですよ。混ぜて貰えばいいでしょう」 左近が苦笑いで助言し、吉継も「付き合う流れか?」などと言う。 『…やっぱ付き合ってんじゃん』 「吉継殿、三成殿、そういうところですよ!」 ブリッジ状態から自分も腕立て伏せ状態になった幸村が釘を刺した。 「違うぞ、!」 「誤解だ!! 俺は男は好きじゃない!」 「えー? 本当にー? なんか嘘くさい〜」 「殿、こればかりは二人の言葉を信じて差し上げてください」 幸村が取りなした。態勢を変えられたことで、精神的にも大分楽になったようだった。 「ちぇ〜、なんとかブリッジの時に幸村さん潰したかったんだけど…やっぱり幸村さんは土壇場で強いなぁ…」 「お褒めに預かり光栄です」 幸村が態勢を変えたこともあって清正にかかる負担は減った。 「くっそー」 正則が悔しそうに不貞腐れるが、の着眼点は鋭い。 「大丈夫だよ、正兄。あの二人、結構筋肉のあちこちに疲労が溜まってるから、次こそは落とせるはず」 先ほど見せた戦略をまた狙っているのが丸分かりな会話だ。 「え、ちょ! 二人がかりとか、大人げなくない?!」 「勝負の世界は非情です」 幸村に宣言されたの腕が、幸村の足と交差する形で引き絞られた。 「ふぇぇぇぇ! こんなんキッツイ!」 右手と左手の位置が上と下でかなり離れる。 「いやぁぁぁぁぁ!! 潰されるーーー!!」 清正の右手はの腰の横へ、左手は頭部の横へ。 「ひぃ!! 引き裂かれる!!」 「はっはっはっはっはっ!! さぁ、降参するなら今だぞ、!!」 兄もどきは妹もどきに対して実に非情だった。 「ちょ! ダメ、本当に駄目!! そ、そこは…あっ…はうぅ! つ、潰れる〜!!」 言葉通り、が清正に潰されかけた刹那、 「ブフォ!」 鈍い音が上がって清正が後方に倒れた。 「いきなり何しやがる!!!!」 激昂する清正に、三成が瞳孔かっぴらいた目で答えた。 「お前があのような格好になるな」 涼しい顔で見ていた官兵衛が珍しく三成の肩を持った。 「清正、卿のあの動きは…不味い。房事を思わせる」 「「「え?」」」 没収試合になったことで床に尻をつた男三人―――清正、正則、幸村が目を瞬かせた。 「え、マジか…」 「三成の横槍は自然な流れだ」 腕組みする吉継が言葉を添えた。 「三成が蹴らなければ、俺が蹴っていた」 疑似的行為に見えなくもなかったと暗に匂わせれば、清正は悪いと頭を掻いてに謝った。 「、遊びは構わぬが、こう体を密着させないで済むようなものはないのか?」 吉継に問われて、は大きな瞳をパチパチさせてから簡潔に答えた。 「じゃ、皆でジェンガでもやる?」 「「「じぇんが??」」」 観客席からも問い返す声が上がった。
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