景品はあなた |
その後、色事においてはお子様なのか何なのか、には恐ろしく自覚もなければ学習能力もない事が分かった。 「というか、続かないから正則、お前外れろよ」
ジェンガは54本の直方体のパーツを縦横に3本ずつ組み上げた18段のタワーをいかに崩さずに、順々にパーツを組み合わせ直して上に伸ばしてゆくかという遊びだ。 「まー、人には向き不向きがあるからのう」
流石にこれは秀吉、清正が圧倒的に強かった。 「一度触ったパーツは引き抜いて、設置し直すまで離したらダメですよ?」 建築ガチ勢と、計算事に強い面々が挑戦するジェンガは、正則、幸村―――ツイスターゲームの影響で指先の震えが止まらない為、自ら棄権した―――を除くと、段々おかしなことになり始めた。きっかけは官兵衛だ。 「こうしても良いのか?」 官兵衛は何故か引き抜いたパーツを横ではなくて縦に置いた。 「え、マジ?」
は意表をついた攻めの手に瞳を瞬かせたが、手強い面々とのジェンガが面白くなってきてしまったのか、それはなしだとは言わなかった。 「あ。届かないや…」 官兵衛のせいで縦にパーツを立てる者が増えたせいで、やたらと高くなったタワーにが困った顔になる。 「えーと…これは仕方ないかな」 諦めるのかと思いきや、はパーツを持ったままで正則を呼んだ。 「ちょ!」 流石に左近が慌てる。 「よいしょっと」 兄妹感覚の二人には、この態勢に違和感はないようで、正則はを肩車したまま立ち上がった。 『……揺れるな…揺れるなよ〜〜〜』 パーツが最上部に重なりかけた瞬間、道場に新たな客が現れて緊張を破った。 「おい、秀吉いるかー?!」 前田利家だった。 「あ!」 「「ああああああ!!!」」 最高傑作だったのにと嘆くのは建築ガチ勢の秀吉と清正だった。 「うーん、これも没収試合??」 正則の肩の上で肩車されっぱなしのがぼやいた。 「それはそれとして、降りましょうか? 御嬢さん」 左近が手を差し出して、正則が腰を落とした。 「いいか! 嫁入り前の女子が簡単に股を開くな!!!」 「え、肩車駄目ですか?」 「だめだ、絶対に駄目だからな? 分かるな? 分かったな?」 「アッ、ハイ」 逆らうとぶっ飛ばされそうだと感じたは素直に頷いた。 「…となると…皆で出来る遊びと言ったら、後は…何があるかなぁ…」 「、かるたとか花札のような札遊びの類はないのか?」 札遊びであれば体が誰かと密着することはないはずと予測して、吉継が問いかけた。 「ありますよ。じゃ、利家さんも交えて皆でウノ、やりましょうか?」 「うの?」 「実はこんな風に誰かと遊べたらと思って、作ってみたんですよね〜」 は軽い調子で言いながら、お手製の板切れの束を持ってきた荷物の中から取り出した。 「あ、でも…利家さん…お仕事の用事とかだったかな?」 「いや、俺は秀吉に呼ばれただけだ」 「清正達がと珍しい遊びをするっちゅーんで、おみゃーさんもどうかと思ったんじゃよ」 秀吉に言われて、なるほどと全員が納得した。 「ええと、皆で遊べるけど台があった方がやり易いかな?」 に言われて門下生が食堂から大型の座卓を運んできた。 「ルールの説明をするので、皆最初の一回はお互いの手札を見せながらやりましょうね?」 は百枚近い木札をジャカジャカと音を立ててかき混ぜる。
「本当は花札みたいに薄い紙で遊ぶゲームなんですけど、私には作れなかったので、この木札で我慢してくださいね。
お手製だけあって、用意された木片には、太陽(赤)・月(青)・花(黄)・竹(緑)の絵が描かれていた。 「まずこうしてよく札を混ぜたら、それぞれの持ち札を配りますが…ええと、参加者の方は挙手で」 ざっと手が上がった。 「じゃ、配りますね」 の手から各人に手札が7枚ずつ配られた。 「初回はルール説明なので、皆さん自分の手持ちを見せてください。親は私がやります」 余った札をまとめて中央に置いて、上部から一枚ひっくり返して場に置いた。 「説明を始めますね〜」 札を切る順番は時計回りでと宣誓してからは自分の手の中の札を取り上げた。 「このゲームでは、場に出ている同じ絵柄、または数字、漢字のある札を1枚出すことが出来ます。 は自分の手持ちから場に札を置いた。太陽の文様の7が記された札だった。
「続いて幸村さんの番になります。幸村さんの手札には太陽の文様がないのですが、7があるので、7の札を切ります。 ふむふむと説明を聞く面々が相槌を打った。 「ありゃ、わしの手持ちに出せる札がない」 「そういう時は山場から札を1枚引きます」 「ローカルルールかもしれないが」と前置きしてからは言った。 「引いた札が出せるものであれば出してしまって構いませんがダメなら次回を待ちます」 「ふむふむ」 「これは俺も山札をとる流れか」 吉継がそういい山札に手を伸ばそうとしたところでが待ったをかけた。 「吉継さんは場に出ている模様と同じ漢字の札を持っているので、それで対応します。 吉継の前に広げられた札の中から『飛』の書かれた札を示した。 「これはスキップと言って、出されると次の人が一回お休みになります」 いい機会だから、他の特殊札の説明もするとは言った。 「吉継さんがこうしてスキップを使うので、三成さんは一回お休みです。 『肆』の札は扱いが特殊な上に攻撃的な札だとは言う。 「この札は肆の他に太陽・月・花・竹の模様があるので、出した者が好きな模様を指定できます。 「どうすれば宜しいのでしょう?」 「山から4枚札をとるか、自分の手持ちの中の『弐』、もしくは『肆』の札を出すかです。どちらにしますか?」 「『弐』を切ります」 問われるまでもなく順番が回って来た清正が同じように『弐』を出し、利家が聞いた。 「これ、『肆』も重ね出し出来るのか?」 「出来ますよ」 「んじゃ、出すな。ああ、模様は竹で」 「お、ならわしも『弐』をきるわ」 無言で吉継と三成が手持ちの『弐』を重ねて出した。
「はい、ここで倍の連鎖が途切れました。私には『弐』も『肆』もないので、ここでペナルティが発生します。 最初から皆の手札を見てそうなるように導いたのだろう、は涼しい顔をして山札に手をかけた。 「と、いうことは場に出ている特殊札の合計18枚を、連鎖が途切れた人が責任を取って引かねばなりません」 「え!」 「うわ!」 「マジか」 「これが小判ならなら大金持ちじゃのう」 じゃらじゃらとの手元に増えた札を見て、皆がぎょっとした。 「これ、あれだよな。失敗すると自分が仕掛けた特殊札が自分に戻ってこないか?」 「判断を間違えると痛い目を見るという事か」 「仕掛け時も見極めが肝心だな」
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