激闘!! 新居獲得大作戦!! |
先程の心霊現象に襲われる前に逃げようと、全員で灯りがある方を目指した。 「これってやっぱり兼続さんだけが頼り?!」 冷や汗を流しながら一向に縮まらない距離を走った。 「はぅ!!」 当然こうした逃げの一手に不向きなが一番に音を上げた。 「旦那様ーーーーーー!!!!!」 瞬間、ごぅ!! と音が鳴り、灼熱の炎が雨戸の一角を焼いた。
「はぁ、はぁ、はぁ…こ、こんな事なら……最初から……半蔵さんにお願いすればよかったね… 「謝辞無用」 そう答えた半蔵の腕の中には、が貼りついて、ぴーぴーと泣いている。 「あ、兼続さん!!」 良かったと安堵したのは束の間だった。 「…こ、これって…もしかして、もしかする??」 ずさっと後退してが問えば、ここぞとばかりに政宗が剣を引き抜いた。 「とり憑つかれたか、兼続!! 安心せい、すぐにわしが正気に戻してやるぞ!!」
らんらんと輝く眼差しと満面の笑みから、彼は本気で殺る気だと、一同は思った。 「返せ……儂のものじゃ…返せ…」 異様な歩き方をする兼続はゆらゆらと揺れるように歩き、へと迫って行く。 「ぎゃーーーーーーーーー!!!!!!!!!」 当然の事ながらは絶叫、と市は早々に意識を手放した。 「返せ…儂の………返せ…」 じりじりとにじり寄って来る妙な動きの兼続。 『あれ? こいつ、もしかして……何かを取り戻したいだけ?』 じーっと見て観察して、そしての帯に引っかかっている櫛に気が付いた。 「っ?! さん?!」
慌てた慶次が追い縋る前に、気が付いた半蔵が後退する。鎖鎌の射程に入り、腰を落とす事で半蔵の邪魔をしないように気をつけつつ手を伸ばしての帯から櫛を取り上げた。 「ちょーっと、待った!! ねぇ、貴方、これが欲しいの??」 見易いように天に掲げれば、兼続の声と、案内役の村人の声が重なる。 「嗚呼!! ばーさんの形見じゃ!!」 「わしのだ」 「ん?」 おかしな事になってきたと、は眉間に皺を寄せる。 「急に高くなった年貢を払えなくてとられただ」
真意を問うように兼続を見れば、兼続にとり憑いている霊は、あっさりとその事実を認めた。 「わしはこの城の主じゃ、わしの政が全てじゃ」 「……ほほう」 ぴくぴくぴくり、の額に血管がはっきりと浮かび上がった。 「返してあげようとか全く思わないの? あなた、もう死んでいるようだけど?」 最後通告とばかりに問えば、霊は答えた。 「わしの物だ、この城もその櫛も……今もこれからも…手放しはしない。 「折ったろか」 、即答。 「?!」 「やっぱり、嫌なんだ? こんな小さな櫛一つでも、拘っちゃったりしてるんだ??」 ジト目で問えば、葛藤し始めたのか、兼続はうろうろと辺りを歩き回った。 「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
往生際が悪いのか、のた打ち回っても決して兼続の中から出ようとしない悪霊。 「とりあえず、人手を出して下さい。それから、商人さんを連れてきてくれますか」 有無を言わせぬの迫力に村人は負けた。
「政宗さん、城の奥に食糧庫みたいな蔵があるんですが、そこをこの人達と一緒に確認してきてくれます?」
お経の流れる携帯端末を兼続に押し付けて、これがある限り、こいつにこれ以上の悪さは出来ないと示した。 「すごいぞ、殿!! 例の蔵も、その床下も隠し財産の宝庫だった!!」 「やっぱり…こんなこったろーと思ったのよね…」 全て運び出すように言えば、出るわ出るわ、古美術品の山と千両箱の山。 「わしのじゃー!! 触るなーッ!!」 兼続の中で喚きたてる悪霊封じの為とばかりに、は携帯端末を慶次へと預けた。
「壕憑さんだったっけ? 貴方の評判の悪さの確認は、あの村人さんの反応とやってる事でよーく分かりました。 ビシィッ!! と指を突きつけて宣誓した後、は身を翻した。 「皆さん、お待たせしました」
ようやく矛先が向いたと安堵の色を顔に浮かべた商人達を手招きで呼び寄せた。 「えー、それではこれより……古城埋蔵財産総取りオークションを開催したいと思いま〜す!!」 何が何やら分からず、商人達は鳩が豆鉄砲でもくらったような顔をする。 「えー、オークションというのはですね、一事で言うと競売です。 淡々と続く説明を受けていた商人達の目に、闘志が湧き上がって来た。 「但しこれは早い者勝ちではありません。
ルールは分かったかと、商人団を見回せば、鼻息の荒くなった商人達は身を乗り出してこくこくと頷いた。 「さー、古美術が欲しいかー!!」 「おおーっ!!」 「止めろーっ!! わしのじゃーッ!!」 「さー、いいもの買い取ってくぞーっ!!」 「おおおーっ!!!」 「触るな、触るな、触るなぁーー!!」 「外野なんか気にしないぞー!! 商売繁盛、笹持ってこーい!!」 「うぉぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!」 「うわぁぁぁぁぁぁ!!」 「じゃー、早速始めましょう〜!! まず第一のお品は…この掛け軸ですッ!!」 野太い声が幾重にも重なり、ものすごいボルテージで始まった競売。 「はい、続いて唐の壷落札!! さぁさぁ、どんどん行きますよー!」
五分の一が掃けた頃、売りに出されている古美術が価値のあるものばかりだと踏んだ商人達は勝負に出た。 「では続いて〜、この筆と硯セットだー!! まずは三十両から行きましょうー!」 「ああああああ、触るな、止めろ、止めろーっ!!」 「五十両!!」 「六十五!!」 「触るな、止めろ!! 下衆どもが!! それは貴様らのような者には…!!」 「七十!!」 「おおっと、七十、七十出ました!! 他にはいらっしゃいませんか!?」 「どうした、価値のある品ものぞ!! 迷うな、馬鹿め!!」 「他にいらっしゃらないのであれば…この品物は…」 「百二十!!」 「止めろ、止めてくれ!! 売らないでくれっ!!」 「百二十!! 他にはいらっしゃいませんか!?」 「百三十五!!」 「百五十!!」 「えー、お茶は如何ですかー。一服したい時、ちょっと冷静になりたい時に、お茶と団子は如何ですかー?」
湧き上がる喧騒の中に、何時の間にか、この村へ来る途中に立ち寄った茶店の主人の姿が見える。 「さー、次の品物は結構大きいですよー!! 「ああああああああ!! よ、よせーッ!! 止めろー!!」 「三百ッ!!」 「おおっと、オジ様男前ッ!! いきなり三百、三百が出ました!! 他に男を見せる方はいないのかー?!」 「五百ーッ!!」 「ついに出ました、五百両〜!!」 「や、止めろ!! 止めてくれ!! それは十五年もかけて探し出した一品で…」 「よしっ!! わしは七百出すぞ!!」 「はい、七百両、他には?! 他にはいらっしゃいませんか?! 「千両だ!!」 煽るのがよっぽど上手いのだろうか、の口上につられて、ガンガン値が吊り上がる。
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