服部のレッツゴー・ブートキャンプ |
"それじゃ、そろそろ、第1回目のトランス・ブート・キャンプを始めるぞ!!
「ちょ、無理!! 立てない、私、今、立つことすら出来ない!! イヤァァァァァァァ!!!!!!
全身にかかる重みで肩は動かないのに手足は勝手に動いてカリキュラムに取り組もうとする。 「姫様、何かあったのか?」 「さっきから何騒いでんだい? さん」 「どうされましたか?」 彼らの目から見たらの姿は異様だった。 「なっ! 貴様、何者だ!! どこから入った!! 様に無礼であろう!!」 慶次、成実が眉を顰め、主に土下座させていると勘違いた幸村が激昂する。 「皆様、申し訳ございませんわ」 ここでが動いた。 「殿、一体、何を…?」 「どうしたい? さん」 意味が分からないと目を瞬かせる成実と慶次。 「ちょ、幸村さん、たんま! ストップ! 待って、待って!! そういうんじゃないから!!」 「し、しかし…様…」 に諌められて、渋々幸村は刀を鞘におさめる。 「「「おわっ!!」」」 慶次、幸村、成実がそれぞれその場に尻餅をつく。 「どうですか、どうですか? 様。少し、楽になられました?!」
「う、うん…な、なんとか……で、でも……ひっ!! いやぁぁぁぁぁ!!!! "どうだい? 体は温まって来たかい? 「いやぁぁぁぁぁぁ!!! 躍動なんかしなくていいーーっ!!」 "腹式で呼吸して、ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、エイト!! さぁ、声を出して!!"
「っていうか、痛い、痛い!! 基本とはいえ、重たいから節々が痛い〜ッ!! まだ立ち上がる事が出来ない。 「痛い、痛い!! 腕もげる!! じゃりが膝に食い込むー!!」 「ン?!」 「な、なんだ、こりゃっ?!」 「えっ?! えっ?! 一体何が…!?」 勿論、一蓮托生とされた三人の体も音楽に合わせて蠢く。 「殿!! これは一体なんなのですかっ!?」 説明を求めて幸村が吼えれば、は残りのリストバンドを手に狼狽しながら叫んだ。 「様を支える同士の方からの贈り物ですの!!
要点だけを掻い摘んだとても見事な説明だが、聞かされた内容に、3人は顔を青くする。 "そう、その調子だ!! 音楽に合わせて、笑顔を忘れずに!! ワン・モア・セッツ!!" 「笑えるかーッ!!!」 「事情は分かったが、どうして俺らにまで…?」 「残りの腕輪を誰かが嵌める事で、様の身に掛る荷重が減らせますの!!」 そういう事であれば嫌はないと幸村が頷き、成実、慶次も納得する。 「なんだ、そういう事かい。なら、俺らに負荷増やしな。さんがきつそうだ」 「そ、それが……お三方だけでは、これが限界ですの!!」 「えええええっ?!」 「参ったね、こりゃ…」
トランス・ブート・キャンプというだけあって、箱から流れ出したエクササイズの為の音曲はユーロビートだった。
「ヤバイ、この手の音楽、私大好きだ!! でも、でもーーーっ!!! 腕が重いーッ!!! 泣き叫ぶの悲鳴を聞きつけて、大量の書面を抱えた竹中半兵衛と片倉小十郎が顔を出す。 「どうされましたか?」 半兵衛と小十郎を見た瞬間、の目が光った。 「ちょ、だ、だめ!! ちゃん、いくらなんでも半兵衛さんや小十郎さんにこういうのは…!!」 「背に腹は代えられません」 友を救うためであれば、非情にもなると、は迷うことなく二人の腕にリストバンドを嵌めた。 「なっ?! なんだ?! なんだ、なんだ、なんだっ?!」 「えっ?! うわっ、おっ、おわっ!!」 妙ちくりんな踊りを踊っているなぁと思ったのは束の間。 「あ、あの…ちょ…ちょっと…これは一体…?」 だが幸村と成実はすぐには答えなかった。 「お、終わった?! 終わったの!?」
尻すぼみになって曲が消えて、ようやく終わったのかと思えば、それは虚しい願望でしかなくて。 「ヒッ!! に、二曲目入ったーッ!?」 "さぁ、次は二の腕と腹筋を鍛えるエクササイズだ!! 美しいラインを作ろう!!" 『く、こ、これ…これは…』 左右に振り回される腕。 「楽しい、確かに楽しい、でも辛いー!! 体重い、腕が痛いーッ!! 腹筋割れるーッ!!」 楽しいのか辛いのかがいまいち判じ難い悲鳴を上げて、はアップテンポなナンバーに合わせて踊りまくる。 『…なるほど…そういうことですか…』
質問を聞き流された半兵衛、小十郎は、何故幸村と成実が答えなかったのかを、身をもって思い知った。 『あ、暑い…!』 『い…い、息が…もたぬ…』
一曲三分〜六分にも及ぶ音曲を、休む間も与えられずに三曲もこなせば、如何に屈強な武士であろうと自然と汗が噴き出してくるし、喉も乾いてくる。
"どうだい? トランス・ブート・キャンプ、楽しめてるかな? 「し、死ぬ……これ、本当に、死ぬ……の、喉…乾いた……み、水……」 半兵衛、小十郎を巻き込んだ事で立ち上がれるようになった為、は足の動きまで加えられるようになっている。 「あ、は、はい!! お水ですね、しばしお待ち下さい!!」 彼女は紙と残りのリストバンドを放り出して駆けてゆく。 「なぁ、さんよ。これ後何曲続くんだい?」 すっかり慣れてしまったのか、この状況を楽しみだしている慶次が問うた。 「それがよく分からなくて……。 「いやぁぁぁぁぁ!! それまるまる一時間って事じゃないよっ!!
差し入れられた水で喉を潤し、髪と着物の裾や袖を振り乱しながら、まだまだトランス・ブート・キャンプは続く。 "どうした!! 君の力はそんなものではないはすだ!!
「出来るかー!!! いいわよ、負け犬で!! どうせ私は強くなんかなれないわよ!! 縁側に立った二人の眼前には、散らばった書面の束。 「…………」 正直、の元へと下ってから大抵の事には慣れたし、許容も出来る度量を培ってきたと思う。
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